おでんで知る選食力 |
お正月のおもてなし料理には、こだわりのおでん
何かとお客様が多いお正月。久しぶりの親戚やお友達に会うのは楽しみだけれど、料理自慢のあなたとしては、お節料理の重箱を並べてすませる訳にもいかないし、腕をふるって、ちょっとサプライズのこだわりメニューを用意したいですよね。
そこで、メニューの一品に、料理人直伝、こだわりのおでんというのはいかがでしょう。寒い冬に親しい人たちでいただくおでんは、しあわせの味。みんなで食卓を囲む光景を想い浮かべただけで、心までほんわかしてきませんか?
素材選びも腕のうち
どんなに料理上手なあなたでも、用意された素材が、しなびた野菜、添加物が多く入っていたり賞味期限の切れた練りものでは、お客様にお出しできる、とっておきのおいしいおでんを作るのは難しいでしょう。逆に、上手に良い素材を選べば、料理の仕上がりも期待ができるというもの。素材をちゃんと目利きして、きちんと良いものを選ぶというのも料理の腕のうちと言えるでしょう。
では、どのような点に注意したら良い素材を見極めて選ぶことができるのか、実際に、おでんの食材をスーパーに買物に行き、目利きのポイントを、銀座・泥武士の境シェフに教えていただきました。
境シェフと一緒にお買い物に行って目利きのポイントを教えていただいたのは、「はなまるマーケット」の、とくまるコーナーほか、テレビやラジオで活躍中の孫明日香さん。主婦に人気のある番組のコーナーを担当しているだけに、ご自身も料理や、食品の安全などにも興味がある様子で、見極め方のポイントを教えてくださる境シェフのお話に熱心に聞き入り、また、質問をしていました。
境シェフ直伝のおでんの具材
今回、境シェフが教えてくださる、こだわりのおもてなしおでんに入れるものは、大根、人参、トマト、椎茸、ちりめんキャベツのロールキャベツ、焼きちくわ、はんぺん、つみれ、こんにゃくです。
おもてなしおでんのレシピ
では、おでんに入れる材料の選び方を、それぞれに教えていただきましょう。
冬の根菜大根の選び方は?
これからが旬の大根。身体を温めたり、ジアスターゼが消化や胃の働きを助けたり、豊富なビタミンCがお肌をきれいにしたり。いろいろな働きをしてくれる、大根の見極め方は、
- 水々しくハリのあるもの
- 重量感があってガッチリしているもの
- 葉がついている大根の場合は白い根の部分が元気なもの。
一般的にどこのスーパーでも手に入りやすいのは青首大根ですが、白首大根が手に入るようなら、そちらの方がおいしいという話も…。
おいしい人参の選び方は?
人参には、カロチン、カリウム、ビタミンA、食物繊維が豊富に含まれているというのはよく知られています。代表的な緑黄色野菜、人参の選び方は、
- 固くて身が詰まっているもの
- 赤い色よりもオレンジ色のもの
- 表面がなめらかなもの
おいしいトマトの選び方は?
「トマトが赤くなると医者が青くなる」というヨーロッパのことわざがあります。トマトに含まれている赤の色素リコピンが活性酸素を除去してくれる抗酸化物質です。活性酸素は、体内で発生し、侵入した細菌を殺す役目をしていますが、過剰になると正常な細胞まで破壊するようになり、これがガンや老化の原因と考えられています。
こんな素晴らしい働きをするトマトですが、本来は夏が旬の野菜ですから、身体を冷やす性質を持っています。寒い季節は、調理法を工夫して、できるだけ加熱して食べるように工夫してみるとよいでしょう。
がん予防、アンチエイジングにもうれしい、良いトマトの見極め方は、
- 形がいびつではなく、整っているもの
- 先端からへたに向けて、放射状に浮きでているように筋が見えるもの
- 身が詰まっていてずっしりと重量感のあるもの
椎茸の選び方は?
椎茸は免疫力も高めてくれるので、風邪の季節にはたくさんいただきたい野菜のひとつです。 良い椎茸の見極め方は、
- 肉に厚さがあるもの
- ハリのあるもの
キャベツの選び方は?
キャベツは品種により旬が違うので、ほぼ1年中、それぞれの品種の旬のものが手に入ります。ビタミンCが豊富で、大きめの葉2?3枚で一日の摂取量がとれる程です。芯を捨てている方も多いかもしれませんが、ビタミンCは特に芯のまわりに多く含まれているので、芯も工夫して食べるようにしてみては?
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防に効果のあるビタミンU(キャベジン)も多く含まれているので、油ものと一緒に食べると胃もたれを防いでくれます。
良いキャベツの見分け方は、
- 葉がしっかりしているもの
- 芯の色が白ではなく、黄緑がかっているもの
- 葉の裏面の葉脈がしっかり出ているもの
今回ロールキャベツに使用するのは「ちりめんキャベツ」。サボイキャベツというのが元々の品種名ですが、キャベツの葉がちりめん状に縮れているのでちりめんキャベツと呼ばれています。
練り製品の選び方は?
おでんの定番とも言える練り製品。どんなものが思い浮かびますか? かまぼこ、ちくわ、薩摩揚げなど、さまざまな種類の練り製品が出回っています。市販されている練り製品の主な原料は、魚あるいは魚のすり身、でんぷん、食塩、醗酵調味料、保存料、甘味料などです。
目利きのポイントは、野菜や鮮魚、肉とは異なり、加工されているので見た目だけでは見極めが難しいのです。そこで、袋の裏面などの原材料表示に注目してみましょう。原材料の中で一番多く使用されているものが一番最初に表示されている筈です。製品の中には魚すり身という表示だけで、原料となった魚の種類が書いてないものもありますが、ほとんどは、タラ、エソ、タイ、グチ、イトヨリダイ、ホッケなどといった魚の名前が表示されています。お住まいの地域であまり聞き慣れない魚を使っている製品を選ぶのも新しい味に出会うことができて発見があるかもしれません。また、エソやグチを中心に使っている練り製品は一般に歯ごたえが柔らかくなることが多いのですが、この歯ごたえこそ職人の腕の見せ処。自分の好みにあった練り製品を探し出すのも楽しいのではないでしょうか。
おでんをおいしくするポイントとしては、原材料の最初に魚の名前が表示されているものを選ぶと良いでしょう。なぜなら、前述のように、たくさん使用している原料が先に表示されているからです。魚から出たおいしいダシを野菜に染み込ませて、さらにおいしいおでんがいただけるでしょう。
ところで、保存料を避けている方も多いと思いますが、保存料のソルビン酸とよく間違えられるのがソルビット(ソルビトール)。ソルビットは甘味料ですからお間違えのないように。甘味料にはソルビットのほか、ステビア、トレハロースなどがあります。この甘味料、練り製品、特に薩摩揚げには必ずと言って良いほど含まれています。よく煮込んだおでんがお好きな方は、練り製品は煮込めば煮込むほど甘みが出てくるということをちょっと頭のすみに置いて、おでん出し汁の味付けの甘みをほどほどに抑えておくと良いでしょう。
ちゃんと選んでおいしくいただく
ご自身や、大切な人のために、安心していただける安全なものをきちんと選ぶ目利き。おいしさのためだけではなく、健康にも大きく関係がある選ぶということ。とても大切なことですね。これからは、今まで以上に、ちゃんと選んでおいしくいただきましょう。
境 眞佐夫(さかいまさお)
1951年 熊本生まれ
株式会社ディーズコーポレーション 代表取締役
・オーガニックレストラン「泥武士」熊本本店
・オーガニックレストラン「泥武士」銀座店
・FANCL CAFE D
・FANCL KICHEN D
・Dell 渋谷店
大学卒業後5年間の米国料理修業を経て、1982年熊本市にデープレストランを開店。1993年の泥武士開店以降、農業や添加物についての啓蒙とともに、オリジナル商品の開発・提供を開始。1999年より東京進出し泥武士銀座店、泥武士広尾店などを出店。2006年からは新規食品事業のプロデューサーとしても活躍中。
孫 明日香(そんあすか)
1973年生
津田塾大学大学院卒
レポーター、司会
テレビ朝日「ニュースステーション」、NHK教育「サイエンスアイ」、NHK総合「いつからこーなの?」、「そのとき歴史が動いた?三国志スペシャル」、「世界謎解きヒストリー ハワイ・秘密の楽園」、NHK BS1「世界の競馬」を経て、現在「探検ロマン世界遺産」、東京FM「サントリー・サタデ?ウェイティングバー」、TBS「はなまるマーケット」で活躍中。